「違う・・・違う。あいつのことはもう、いいんだ」
緩く首を振りながら吐き出した言葉は、自分でも驚くほど弱々しかった。どうやら相当、堪えているらしい。
俺が悪かった。そのたった一言さえあればこの苦痛から逃れられるのだが、生来のプライドの高さがそれを邪魔立てする。
喧嘩はしょっちゅうするのに、いつも仲直りをするのに時間がかかるのはそういうわけだ。
お互いに相手を知りすぎているから、つい甘えて寄りかかってしまう。
ごめん、なんて謝罪をせずとも、時間が経てばいつの間か仲直りをしていた。
そんなことが当たり前のようだった昔が懐かしく、羨ましかった。
「ちくしょ・・・」 情けなかった。
素直に謝れない自分も、ただ携帯を握り締めているだけで行動を起こそうとしない自分も。
あまりの悔しさと腹立たしさに、鼻の奥がつん、と痛みだす。
しまったと思ったときには涙が一筋、頬を伝い流れ落ちていった。 |